ポレポレ 42 – 成蹊大学

ポレポレ

[1] Men can communicate; so can the other animals. [2] But men can communicate across the barriers of time and space, while the other animals cannot, for man alone holds the secret of the greatest of all inventions: the written word. [3] Beside this, the telephone, the radio, the television are the toys of children. [4] Only recently, in fact, have men conquered, by means of the spoken word, any space larger than that over which the natural voice will carry, whereas down through the long course of history, writing has been of inestimable service in bringing men and nations closer together. [5] We should know little enough, indeed, of that very history if we had to rely on oral tradition alone.

成蹊大学

Contents

【第1文】文構造を分析してみた

Mencan communicate; (so)canthe other animals.

[訳してみた]

人間と同じように,他の動物だって意思疎通はできる。

[気をつけたところ]so + (助)動詞 + 主語

まず,枝葉末節な事ですが, so の文の要素をどうするか,悩みました。原則に従えばso canthe other animals. なのでしょうが,ペンギンは副詞として処理しました。

江川泰一郎著 英文法解説(p.59)には,[ so + (助)動詞 + 主語 ]の倒置において,so は「先行する句・節の代用として代名詞的に使われる」とありますが,ペンギンが副詞として処理した理由は以下の通りです。

ここの so can the other animals では,前出の内容にはない新情報 the other animals に強勢を置いて読みます。つまり the other animals こそがこの文の焦点ということです。なので,書き換えると the other animals can communicate, too. となり,Ⓥ で処理してしまっては,too のニュアンスが出ないような気がしたのです。

「人間は意思疎通ができる。動物も意思疎通ができる。」という訳では余りにも味気なく感じるのは,新情報にこそ焦点というニュアンスが欠けているからだと思います。ペンギンには,どうも so が原則とはちがって, too の役割を果たしているように見え,副詞として処理しました。これを和訳にも生かして「人間と同じように,他の動物だって意思疎通はできる。」という新情報に焦点を置いた和訳をしました。

【第2文】文構造を分析してみた

But Ⓢ men can communicate (across the barriers of time and space), while Ⓢ the other animalscannot, for Ⓢ man (alone)holdsthe secret <of the greatest of all inventions> {補足説明: the written word}.

[訳してみた]

しかしながら,人間は,時間と空間という障壁を超えて意思疎通ができる。一方で他の動物はそうはできない。これは人間だけがあらゆる発明の中でも最も優れた秘訣を有しているからである。その秘訣とは,書き言葉である。

[気をつけたところ]コロン(:)の役割

文法的な問題はほとんどなし。of は同格,for は後ろが節になっているので,原因理由を表す接続詞。

ただし, コロン(:)の役割 については気をつけました。

コロンやダッシュは,前の文の「よく分からない部分」や「説明が必要な部分」の補足説明や具体例を挙げる論理記号です。この文で補足説明が必要な部分とは,the secret of the greatest of all inventions でしょう。「つまり,それは一体何なのかというと」という一言の役割をコロンが果たしていると考え,和訳に活かしました。

【第3文】文構造を分析してみた

(Beside this), Ⓢ the telephone, the radio, the television arethe toys <of children>

[訳してみた]

書き言葉に比べて,電話,ラジオやテレビといった話し言葉というものは大したものではない。

[気をつけたところ]

beside には「〜のそばに」という意味に加えて,「〜と比べて」という意味がある,ということを辞書で引いて確認。this は前出の the written word を指しているので,和訳でもそのまま使います。

the toys of children は直訳すれば「子供のおもちゃ」ですが,この文章は書き言葉の偉大さを述べたものなので,対立する話し言葉は「大したものではない」という訳にしました。

【第4文】文構造を分析してみた

(Only recently), (in fact), Ⓥ havemenconquered, (by means of the spoken word), Ⓞ any space <larger than that <over which ⒮ the natural voice ⒱ will carry>, whereas (down through the long course of history), ⒮ writinghas beenof inestimable service (in bringing men and nations closer together).

[訳してみた]

最近まで人間は話し言葉では,その声が届くよりも広い範囲を支配することはできなかった。一方,長い歴史の中で国家と国民を密接に結ぶという点において,話し言葉は計り知れないほど貢献してきた。

[気をつけたところ]only の訳・名詞の反復を避けるための that の訳

否定の副詞句 only recently が文頭にあるので倒置が起こっています。

only は否定の副詞なのですね。I want only you が「あなただけが欲しい」という肯定訳と「あなたたしかいらない」という否定訳の両方の訳ができる点に気をつけます。

only recently も「最近になって〇〇した」という肯定訳と「最近まで〇〇しなかった」という否定訳の両方が可能です。どちらが適切かを考えて,ペンギンは後者の否定訳でとりました。ポレポレの和訳をみると,前者の肯定訳でとっていますね。

ちょっと考えたのは,any space larger than that の that の役割について。

ここは,比較級の中で使われていることからも,名詞の反復を避けるための that だと識別できます。

安西徹雄の翻訳の英文法によれば,「これを訳すときは省略するか,もしくはもとの名詞をもう一度出すほうがよい」(p.63)とのこと。

たとえば,有名な The climate of this country is milder than that of India. であれば,「この国の気候はインドのそれよりも…」とするより「この国の気候は,インドの気候よりも…」とするか,省略してしまって「この国の気候はインドよりも…」とした方がよいというわけです。日本語は英語ほど何と何を比較しているのか厳密に表す必要はないということですね。

なので,that は space を指していますが,和訳するときは同じことを2度も訳さずに省略します。さらに,that には関係代名詞の節がかかっているので,「(話し言葉の)自然な声が届く以上の空間」➡ 「その声が届くよりも広い範囲」と訳しました。

whereas は「対照」を表す接続詞なので,前半は大したことない話し言葉,後半は偉大な書き言葉というニュアンスを出しながら和訳します。

of service は [ of + 抽象名詞 = 形容詞 ] なので補語になり,「役に立つ・貢献する」という意味。1語の形容詞では serviceable。in + ing は「〜するときに」という意味もありますが,ここでは普通に「〜する点において」bring O together も熟語で「Oを結びつける・まとめる」

【第5文】文構造を分析してみた

Weshould know (little enough), (indeed)ofthat very history (if ⒮ we ⒱ had to rely on oral tradition alone).

[訳してみた]

実際,もし口頭の伝承にしか頼っていなかったとしたら,我々はその場合の歴史というものをほとんど知っていなかったであろう。

[気をつけたところ]

should は 条件を表す if節の had to rely と呼応して仮定法過去。つまり,現在の事実と逆。「もし〇〇だったら,✕✕であろう」

little enough は少し訳しづらいですが,enough は「十分に」という副詞で,これを準否定の副詞 little が「ほとんど〜ない」と打ち消しているので,「ほとんど十分ではないくらい」となります。

動詞は know of,目的語が that very history なので,「その歴史というものをほとんど知っていないであろう。」という訳ができます。 very は形容詞で history を修飾。 名詞を強調する形容詞の very の訳は「まさに〜」や「〜そのもの」や「〜というもの」となります。that は単純に指示代名詞「その」という that。細かくいうと,「話し言葉でしか歴史というものを伝承しなかった場合の”歴史”」というように very history を限定しているので,the と同じような働きと考えましたが,これをわざわざ訳出する必要もないかな,と判断して消しました。(上では取り消し線が引いてあるところです)

コメント

タイトルとURLをコピーしました