[1] In fairy tales, as in life, punishment or fear of it is only a limited deterrent to crime. [2] The conviction that crime does not pay is a much more effective deterrent, and that is why in fairy tales the bad person always loses out. [3] It is not the fact that virtue wins out at the end which promotes morality, but that the hero is most attractive to the child, who identifies with the hero in all his struggles. [4] Because of this identification the child imagines that he suffers with the hero his trials and hardships, and triumphs with him as virtue is victorious.
一橋大学
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【第1文】文構造を分析してみた
(Ⓜ In fairy tales), (Ⓜ as in life), Ⓢ punishment or fear <Ⓜ of it> Ⓥ is (Ⓜ only) Ⓒ a limited deterrent <Ⓜ to crime>.
[訳してみた]
【訳】おとぎばなしの中では,実生活でもそうであるように,罰や<罰に対する>恐怖というものは,<犯罪に対する>限られた抑止力でしかありません。
[気をつけたところ]as の識別
前置詞や従位接続詞のついている名詞は,主節の文の主語にはならないという大原則がありました。よって,これらのついていない punishment と fear を文の主語に決定します。
となると,主語より前に出てきた In fairy tales と as in life は括弧で括って修飾語句ということになります。というか,「前置詞 + 名詞は原則 M(修飾語句)」ですよね。
さて,In fairy tales は良いですが, as in life をどう訳すか,考えなくてはなりません。
ただし,必ずピリオドまで読んでから考えはじめます。
せっかちなペンギンは,しょうちゅう同じ過ちをしてしまいますが,as in life と読んだ時点で「え〜っと,ここの as は…」と考え始めてしまいます。
これではダメですね。富田先生の読解の原則には100個もの原則が載っていますが,その一番最初の原則がまずはピリオドまで読め,というものです。以下の通りです。
英文は,まずピリオドまで目を通してから読解作業にかかること。決して一部だけで何かを考えてはいけない。
富田読解の原則 1 /100
これ,肝に銘じておかなくてはなりません。
ピリオドまで読み,大意が掴めれば,as の部分の訳が勝手に決まってくることもあります。
(おとぎばなしでは)… (as の部分は後から) … 罰やそれに対する恐怖というものは,犯罪に対する限られた抑止力でしかない。ピリオドまで読めば,ある程度 as の部分も想像つきますが,見ていきましょう。
as は前置詞か接続詞かという問題は,今回は簡単です。というのも,in life と前置詞句が続いているので,前置詞句の前に前置詞とは考えがたいですね。万が一前置詞だとしても,それに続く名詞がありません。よってこの as は接続詞だろうと識別できます。
「後ろに節が続くと書いてセツゾク詞!」というのはペンギンが高校時代に習ったおじいちゃん先生,K先生の口癖。
あれ?節が続いていません。 K先生!節が続いていません!
「ならば省略!」というK先生の声が聞こえてきそうです。もう20年も前のことなのに…。K先生,まだご存命だろうか…。
富田先生の本にも書いてありました。
as の分類
as の後ろが完全な文 → as は「時」「理由」
as の後ろが不完全な文 → as は「様態」
※ただし,as の前後に同じ形の反復がある場合は,後ろが完全であっても,「様態」になる。
富田読解の原則 17/100
省略のある不完全な文なので今回の as は「様態」と取って「〜のように」と訳してよさそうです。省略のある文は,省略部分を補った元の文まで考えるようにしています。
省略されたところを補って分かりやすく主節を前に出すと,Punishment or fear of it is only a limited deterrent to crime (in fairly tails), (as these are only a limited deterrent to crime in life). という形になるでしょう。
訳は「罰や罰に対する恐怖というものは,(おとぎ話では)(生活の中でもそれらが犯罪に対する限られた抑止力でしかないように,)犯罪に対する限られた抑止力でしかない。」となって,同じことを繰り返すということが,あまりにしつこく感じるのは日本語でも英語でも同じなんでしょうね。下線部を省略すると, as in life となります。
【第2文】文構造を分析してみた
Ⓢ The conviction {同格 that crime does not pay} Ⓥ is Ⓒ a much more effective deterrent, and (Ⓜ that is why) (Ⓜ in fairy tales) Ⓢ the bad person (Ⓜ always) Ⓥ loses out.
[訳してみた]
【訳】犯罪は割に合わないという確信のほうが,はるかに効果的な抑止力であり,だから,おとぎばなしでは常に悪人は懲らしめられるのだ。
[気をつけたところ]同格の that
The conviction に続くthat 節が完全文なので(pay の自動詞の意味 = 「割に合う・ためになる」を知っていないと完全文という判断は厳しいかもしれません),that は名詞節を作る接続詞です。この that が作っている名詞節が the conviction と同格になります。
同格とは直前の名詞と格が同じということです。今回の英文では, the conviction が主語(主格)なので,並列する that節 も主語(主格)になります。ただし,訳すときは形容詞的に訳します。「{that節という} conviction = 確信 」といった感じですね。これが 同格の that と呼ばれるものです。これまで同格の that と聞くと,何か that の特別な使い方だと思っていましたが, 実際はただの接続詞で名詞節を作っているだけなんですね。
【第3文】文構造を分析してみた
強調構文 It is not Ⓢ the fact {同格 that ⒮ virtue ⒱ wins out (Ⓜ at the end)} which Ⓥ promotes Ⓞ morality, but {that ⒮ the hero ⒱ is ⒞ most attractive (Ⓜ to the child), <Ⓜ ⒮ who ⒱ identifies (Ⓜ with the hero in all his struggles)>}.
[訳してみた]
最終的に善人が勝つという事実ではなく,ヒーローは(子どもたちにとって)最も魅力的で,子どもたちは,(もがくときはいつでも)ヒーローと同一視するという事実こそが道徳観を促進するのです。
[気をつけたところ]とにかく難しい!全く歯が立たず。
全く歯が立ちませんでした。
全く分かりませんでした。完敗です。
ポレポレを読んで,時間をかけて理解しました。忘れないようにここに整理します。
とりあえず一読して,最初に分かったところは,同格の that です。これは分かります。先程もでてきましたから。うしろに完全文が続いていますから,この that は名詞節を作る接続詞で,その名詞節こそ the fact と同格になります。(ただし,ペンギンは最初,it を形式主語と取っていたので,the fact を補語Ⓒ と取りましたが,それは間違えていることが判明しました)
すると,同格の節の中にある関係代名詞(だと思っていた。後から間違いだったと判明)の which の先行詞が… ないっ! (これが全てのはじまりでした。以下,ペンギンの混乱っぷりをどうぞ)
え?ってことは・・・この関係詞の節は the end にかかって,「道徳心を促す終わり方」みたいな感じになるの?いやいやいや,それじゃ意味分かんない。こっちがまさにジ・エンドだよ。
え?形式主語のit だよね,これ?その真主語(だと思っていた)の that の前に but だと?しかもカンマもあるし!しかもカンマもあるし!え〜ちょっと待ってよ〜。
しかも,is と promotes って文中に動詞2個出てきてんじゃん!「ブイブイ言わせてるねぇ」って高校時代,英語のO先生が言ってたわ。「そりゃ取り違いだよ」って。
…はい,お手上げです!
まぁこうなったらおしまいですよね。諦めました。大学入試でもこんなに難しいんだ。一橋大学。ワンブリッヂ。
で,ポレポレ読んで目から鱗。
うわ,強調構文 かよ…。
確かに,形式主語構文の 真主語だと思っていた that節の前に but って変ですよね。しかもカンマあるし。ってことは,形式主語構文ではないから,別の可能性を考えなきゃいけなかったんですね。
あと,これも悩みましたが,やっぱり which も関係代名詞とは考えにくいですよね。先行詞が何なのか不明です。
さらに,この一文が分からなかった決定的な要因は,等位接続詞 but が繋いでいるものを考えなかったところにあると思います。等位接続詞の以下の原則は何度も読んだのに…。
等位接続詞の前後には,文法上同じ働きをするものがくる。それを発見するためには以下の手順を踏む。
① 等位接続詞の後ろの形を確認する
② 前でそれと同じ形を探す
③ 同じ形になっているもの同士を並列に書き並べる。
富田読解の原則 3 /100
①but の直後には that節(完全文・名詞節) があります。②それより前の部分で, that節・完全文・名詞節で検索します。➡ 同格節がヒット! ③ 前の that節には not が付いているので,not A but B の呼応表現を適用すれば「not the fact that節A〜 + but that節B〜 」という骨格が見えてくるはずだったんですね。当然,but と that節B の間には the fact が省略されていて,訳は「A〜という事実ではなく,B〜という事実」となります。
not A but B に気付ければ,主語が見抜けたはずです。そうすれば動詞も見抜けたはずです。主語が長いから,主語の後半部分を後ろに回したのだと分かったはずです。 Ⓢ Not the fact that virtue wins out at the end but the fact that the hero is most attractive to the child, who identifies with the hero in all his struggles Ⓥ promotes Ⓞ morality. これでは頭でっかちな英文ですからね。くそぉ〜気付けなかった。
it is と 関係代名詞 を無視しても文が(ある程度)成立するのが強調構文(分裂文とも言う)ですので,it is と which に取り消し線を引きました。
それから,関係代名詞の非制限用法のところもちょっと訳しづらかったです。
非制限用法ということは,先行する句・節に追加説明を加えます。追加情報なので,日本語で言うと「そして・更に言うと 〜です」ということですから,追加情報の非制限用法の時ペンギンは and を使って言い換えるようにしています。the hero is most attractive to the child, and the child identifies with the hero in all his struggles. といった具合に。
少し困ったのは前置詞句 in all his struggles の訳です。基本は「〜という点において」だと思いますが,「そして彼らのすべてのもがきにおいて」という訳は不自然ですよね。
なので「もがき」という名詞を動詞化して訳を考えました。結果「もがくときはいつでも」という訳を与えましたが,どうでしょうか。
さて,今回全く歯が立たなかった原因をまとめると・・・
- it is 〜 that … を形式主語構文以外の可能性を考えられなかった。
- 先行詞が明確ではないのに,whichを関係代名詞だと固執してしまった。
- 以上の2つはつまり,強調構文に気が付かなった,となります。
- 等位接続詞の but がつなぐものを考えられなかった。
と,いろんな原因が複合的に起こっていたのだと思います。
それにしても超難問でした。参りました。勉強になりました。
【ボキャブラリ】語句まとめ
- fairly tale【名】おとぎばなし
- punishment 【名】罰・刑罰
- fear 【名】恐怖
- limited 【形】限られた
- deterrent 【名】抑止力 【動】deter (O+from〜ing) – Oが〜するのを引き止める・思いとどまらせる
- conviction【名】確信・信念
- pay 【動】もうかる・割に合う・骨折りがいがある・ためになる
- lose out 【動】負ける・敗北する・損をする
- virtue【名】善・徳・美徳 ⇔ vice 【名】悪
- win out 【動】勝つ・勝利を勝ち取る
- promote【動】〜を促進する 【名】promotion – 促進
- morality【名】道徳観・倫理観 moral 【名】道徳・モラル【形】道徳上の
- attractive【形】魅力的だ・魅力を感じるような
- identify with〜【動】〜と同一であるとみなす・同一視する・…と一体になる 【形】identical – 全く同じ・そっくりな 【名】 identification – 同一・同一であることの証明・身分証
- struggle【名】もがき・苦闘
コメント
[…] 前回のポレポレ (例題32) では,強調構文に気付けずに撃沈したので,その失敗を活かして,見抜くことができてよかったです。 […]