ポレポレ 45 – 慶應義塾大学

ポレポレ

[1] So important is the role of the environment that talking of an “innate” tendency to be aggressive makes little sense for animals, let alone for humans. [2] It is as if we were to assert that because there can be no fires without oxygen, and because the Earth is blanketed by oxygen, it is in the nature of our planet for building to burn down.

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【第1文】文構造を分析してみた

So importantisthe role <Ⓜ of the environment> that Ⓢ talking of an “innate” tendency <Ⓜ to be aggressive>makeslittle sense (Ⓜ for animals), (let alone for humans.)

[訳してみた]

【訳】環境の役割というものはあまりにも重要である。なので,生まれつきの攻撃的な傾向を語ったところで,動物についても,ましてや人間にも,ほとんど意味をなさない。

[気をつけたところ]倒置と so that 構文の組み合わせ・名詞を動詞化して和訳

パッと見ると、難解な英文の感じがする理由は,倒置と so that 構文 が組み合わさっているからでしょう。

so that 構文の [so + 形容詞または副詞]の部分が文頭に置かれると倒置が起こります。これは,強調のために,(1)程度を表す語句を前に出していることによる倒置です。この種類の倒置には他にも (2)such や (3)well,が前に出た場合 や (4)感嘆文による倒置 があります。

『英文法解説』(江川泰一郎著)には,上の4種類の例文として以下が挙げられています。

(1) So intimate is the relation between a language and the people who speak it that the two can scarcely be thought of apart.
国語とこれを話す国民との関係は非常に密接なので,両者を切り離して考えることはほとんどできない。

(2) Such was the force of the explosion that all the windows were broken to pieces.
爆風が凄まじくて,窓ガラスが全部粉々に飛び散った。

(3) Well do I remember the day when I first saw the Southern Cross in Australia.
オーストラリアで南十字星を初めて見た日のことを私はとてもよく覚えています。

(4) How different from the great nation we are today was the America Columbus discovered!
コロンブスが発見したアメリカは,大国であるわれわれの今日のアメリカとどんなに違っていたことか。

英文法解説(江川泰一郎著) p.485

so that 構文の倒置に関連して,もう1種類別の倒置が存在します。

補語になる形容詞が前に出た場合の倒置です。これは強調,というよりも主語の名詞に長い修飾語句が続いて重いため,また,動詞が be 動詞で軽いために起こる,いわば文のバランスを整えるための倒置です。再度江川泰一郎著『英文法解説』を引用します。

(1) Happy are those who know the pleasure of making all people happy around.
周囲の人々を全て幸せにする喜びを知っている人は幸福である。

(2) Heavy is the burden of responsibility that has lain upon me without a break for years.
長年私に絶えずのしかかっていた責任の負担は実に重い。

※ ただし,主語が代名詞の場合は倒置は起こらない。
Certain it is that two and two make four.
2 と 2 を足せば 4 になるのは疑う余地がない。

※ 補語ではなく,目的語が前に出る場合は,S+Vの語順は変わらないので厳密な意味での倒置ではない。

英文法解説(江川泰一郎著) pp.485 – 486

今回の倒置は,文のバランスを整えるために補語を前に出した倒置ではなく,程度を強調をする倒置だとペンギンは判断しました。この強調を和訳にも生かそうと,「環境の役割というものはあまりにも重要である。」とここで文を切りました。そして,「なので…」と that節を続けてみましたが,どうでしょうか。

that 節の主語は talking of an “innate” tendency to be aggressive という 名詞構文 です。名詞構文は,述語化して訳します。talking という 名詞を 内包されている talk という動詞に変えて和訳します。さらに of〜 は talk の目的語として和訳します。ただ名詞を動詞にするのではなく,副詞節として訳すと自然な訳が可能になる場合が多く,今回も例外ではありません。「生まれつきの攻撃的な傾向を語っても」と譲歩の副詞節として訳出してみました。「生まれつきの攻撃的な傾向を語ることは」という名詞をそのまま名詞として和訳したものよりも自然,というか座りの良い和訳な気がします。

let alone… は否定文の後に付けて「ましてや…は言うまでもない/…は言うまでもなく」という成句ですね。否定する対象をもう1つ付け足す感じでしょうか。
She can’t speak French, let alone German.
彼女はドイツ語は言うまでもなく、フランス語も話せない。
She can’t ride a bicycle, let alone a motorbike.
彼女は自転車にも乗れないから、ましてやバイクは無理だ。

【第2文】文構造を分析してみた

Itis [名詞節Ⓒ as if ⒮ we ⒱ were to assert [⒪ that (Ⓜ because there can be no fires without oxygen), and (Ⓜ because ⒮ the Earth ⒱ is blanketed (Ⓜ by oxygen)), 形式 it is ⒞ in the nature <of our planet> (意味上Ⓢ for building) 真⒮ to burn down]]

[訳してみた]

それはまるで,第一に酸素がないところに火が起こるはずがなく,第二に地球は酸素に覆われているという理由で,建物が焼け落ちてしまうことは地球の本質であるということを主張しようとするようなものだ。

[気をつけたところ]

文頭からピリオドまでの間に,主節+従属節が4つもある文で,ペンギンの情報処理がおいつきません。こういうときは一気に処理しようとすると固まってしまうので,文を分解してメモリの負担を減らします。

まず,It is as if we were to assert〜 だけなら余裕です。 as if (あたかも〜のようだ)+ be to 不定詞(if に続くのでここでは『意図』〜しようとする)が組み合わさって「〜を主張するようなものだ」という塊になります。

続く that節 が主張の内容を表す名詞節。その中に,理由を表す because節 が and を挟んで2つあります。なので,英文に firstly などは書いてありませんが,和訳に「第一に」「第二に」とナンバリングをふりました。

that節の中の主節(←that節自体が従属節なのは明らかですね)は,形式主語構文です。it is in the nature of this planet 「この惑星の本質である」と始まり,その本質の内容は真主語 for building to burn down 「建物が焼け落ちてしまう」という部分です。和訳完成です。「それはまるで,第一に酸素がないところに火が起こるはずがなく,第二に地球は酸素に覆われているという理由で,建物が焼け落ちてしまうことは地球の本質であるということを主張しようとするようなものだ。

ペンギン
ペンギン

日本語の意味が分からない・・・

日本語には直せても,その内容が全くわからないということはよくあります。今回もまさにそうで,ペンギンの頭の中は「???」という感じです。そういう場合は,エイゴをニホンゴに換えたという表面的な理解しかできていないのだと思います。ということで,再度第1文に戻り,もう少し理解を深めたいと思います。

第1文では enviornment (環境)と innate tendency (生まれつきの傾向)という言葉が出ていますが,これら2つは「対比」 で使われているのだと思います。to be aggressive 「攻撃的であること」は,先天的(=生まれつきの傾向)なのか,後天的(=生まれてから環境によって獲得されるもの)なのか。この点に関して筆者は第1文で,「環境の影響が大きいのだから,生まれつき持っている攻撃的な傾向の話をしてもほとんど意味をなさない」と言っています。この時点での筆者は,攻撃的傾向に関して,先天的な要因(生まれつきの本質)をあまり信用していないのです。

先天的要因・生まれつきの本質をつべこべ言うのは,【第2文目の比喩表現のように】全く意味をなさないのですよ,という観点で第2文の内容を考えてみます。

地球で建物が焼け落ちてしまうのは地球の本質(=先天的なこと・もともとの性質)であると主張することは全く無意味だということは分かります。「地球には酸素があるから存在している建物はすべていつか燃え落ちる」という主張は,理論としてメチャクチャですから。大事なのはここからです。この表現を通して筆者が言いたいことは何なのか,そこを理解しないと和訳はできても,英文を理解したことにはなりません。

ペンギンなりに1文目と関連付けて解釈してみます。攻撃的だという現在の状態は,必ず環境(家庭環境や友人関係など)が影響している。ある人や物の,現在の状況や問題や現象などを考える時に,そういった環境や後天的要因を無視して,「こいつは生まれつき〇〇だから…」とか,「あいつの〇〇という点は,先天的なものだから仕方ない」と主張したり,結論づけるのは間違っていますよ!ということを筆者は言いたいのではないでしょうか。慶應義塾大学で出題された長文の中の二文だけですから,あくまでも推測の域を出ない解釈ですが。

和訳はできても内容が難しい英文でした。

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